継続は力なり
私の師匠である、沖縄空手道小林流武徳館協会の初代会長儀武息一先生は、1年間1日も休まず稽古に通ったが、表彰されることもなく、だれにも褒められることもなかった。という経験から、ご自身が道場を持つようになって、皆勤賞を授与されるようになりました。
1年間休まず稽古したことを讃えるという内容の賞状と共に、トロフィーと高級空手着を副賞として授与くださいました。トロフィーは、皆稽古を続けた年数に応じて毎年大きくなるので門下生にはとても魅力的で皆が目指す目標になっていました。私も、8年間連続のあと1年、間が空きましたが、9年の皆勤賞をいただけたことは、自分自身とって何よりの自信になりました。また、9年ともなるとこれ以上大きなトロフィーはないということで、切り子ガラスのワイングラスをいただいたことも大変、楽しくうれしい思い出となっています。
そのトロフィーには、「継続は力なり」という言葉が彫られたプレートが貼り付けられていました。自宅に飾られたトロフィーの「継続は力なり」の文字が、稽古に向かう私の気持ちをいつも奮い立たせてくれました。
我々もその慣習を踏襲し、皆稽古賞を設けました。門下生の目標になれば、日々稽古に励む者を讃えられればと思い表彰していました。10年連続皆稽古を達成した者もおりました。我々の道場では、トロフィーではなく毎年大きくなる盾をプレゼントしていましたが、コロナ禍で中断したままになっています。文化が途切れ寂しい感じもしましたが、武道としての本質を考えず皆稽古賞を取ることが目的になってしまう門下生もいたため、皆稽古賞の意義を見直すよい機会になったと思います。
でも、「継続は力なり」「継続こそが力なり」ではないでしょうか。もちろんただ、続けているだけではダメで、日々行う基本の稽古であってもどの指に力をいれるか、背中を意識するか、体の前面を意識するかなどなにかしら工夫をしながら継続する必要があります。
その工夫をしながら継続し、積み重ねたものは、絶大な力となります。才能やセンスがある者は、ある程度なら何事も器用にこなすこともあると思いますが、長い年月をかけて、工夫に工夫を重ねて身につけたコツなどは、誰も太刀打ちすることはできません。ましてや、10年20年、30年の単位になるとなおさらです。
なにかを始めた頃は、同じ年齢や近い年齢の者が多く、競争率も高くなり、簡単にはみんなの上に立つことはできず、自分よりも才能のある者が結果を出す姿に嫉妬したり、悔しい思いをすることも経験します。ところが、10年、15年、20年と続けると才能ある者たちもやめてしまい気づくと続けているのは、一人だけということもあります。ナンバー1になりたかったが、オンリーワンとなり、結局、無敵という状況になったのです。また、その人のその世界での存在自体は、とても貴重なものになっていきます。
しかし、人々の中には、この継続によって身につけることに重きを置かない方もいます。指導者がよければ、マニュアルやプログラムがよければ、短い時間で身に付くもののように考え、週に1時間程度の短い時間で成果を求めようとする人もいます。
今では、スマホやインターネット、YouTubeなどで手軽に情報が手に入るため、知っているつもりになる恐れもあります。知っているとできるにはとても大きな隔たりがあります。
「継続は力なり」という言葉を思い起こし、日々、工夫して研鑽を重ねたいものだとあらためて思いました。
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